佐仁通信

イショ遊びとイシュビ

奄美は宝の島

 奄美パークの応援隊の研修で竜郷町長雲の『奄美自然観察の森』へ行ったとき指導員の作田裕恒先生が『いまごろ若芽を出している野草で食べられないものはほとんどない、といっていいくらい奄美は野草の宝庫です』と説明しておられました。私もとても関心のあることなので、『そのとうり!』とわが意をえたように自然にうなずきました。

 わたしの周りでは二月になったら『アオサ摘み』に海辺に出かけるのが毎年の楽しみのひとつです。車のない友人たちを誘って今年も二度ほど出かけました。春先の潮風にふかれ、海辺に寄せる波の音を聞きながらアオサを摘み、ごみや砂を洗い落とし、乾燥させて冷凍庫に一年分くらいの食用を確保しました。つづいては『アザミ採り』です。集落によっては知られていないようですが、わたしたちのシマ、笠利町の佐仁集落では『アザンギすぐり』といって、海辺ちかくの砂地に自生しているノアザミの葉茎を、豚骨と煮込んで料理する習慣があります。旧正月にはこのアザンギ料理を家族そろって食べないと年越しできないといわれるくらい、伝統的な食文化のひとつとなっています。野草独特のクセやアクがなく、シャキシャキした食感がうけ、最近は一般的に知られてきたようで、スーパーでも売られるようになりました。遠方から車できて採り尽くすので、近年は畑や屋敷内で栽培する農家がふえてきました。本土のある地方では薬草として珍重しているところもあると聞いています。

 やがてサトウキビ刈りが終わりに近づくと、『ツワ採り』です。新芽が出てきてとても柔らかく、わたしたちの集落では『ミンヅワ』とよんでいます。ハブに気をつけながらこれを採り、保存用に塩漬けにしたり、乾燥したり、佃煮に仕立てたり、近頃は味噌漬にする人もいるようです。

 『ツワ採り』のあとには『フノリ摘み』の季節がやってきます。二三日前の大潮の日に、岩場に生えているフノリ摘みにでかけました。時期的に少し早いようでしたが、それでも一時間少々でボール一杯くらい摘んできました。それからきれいに砂を洗い流し、酢をすこし入れて冷やし固め、九十四歳になる従姉妹に届けたところ大変喜んでもらいました。夜には叔母に先立たれて一人で暮らしている叔父の家に、夫と従兄弟その友人の四人ででかけ、フノリを酢醤油で味付けして焼酎の肴にだしたところ、『おいしい、おいしい』と、とても好評でした。添加物のまったく入っていない海藻ですから、酒肴としてもとてもよい食材だと思います。

 本土(横浜)の人で名瀬で生活している知人が口癖のように『奄美は宝の島』といいます。常々自然との共生をモットーにしていて、教えられることの多い人だけに重みがあります。
 あまりに自然に恵まれていて、ついついその恩恵を見失いがちな私たちは、もっと下辺から奄美の良さ、食、人情、伝統文化を見直していかなければいけないのかもしれません。


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