佐仁通信

 

七夕の日の決心

 ことしも旧暦の七夕にあわせて、ひとりで七夕飾りをつくりました。作ったのはほんのわずかで、実際は、数日前から集落のお店で売っていた既製品が主体で、手作りは付け足し程度。なんとか七夕飾りらしくなったかな?というしろもの。それでも束の間の童心にかえることはできます。
 子供のころ、兄妹が多かったわが家では、みんなそろってワイワイ言いながら、いろいろな飾りを手作りしたものです。色紙を半分に切って何枚もつなぎ合わせ長さを競ったり、リングつなぎにしたり、ひしがたに切ったものを長くつなぎあわせたり、願い事を短冊に書いたり。最後は和紙でコヨリをより竹竿いっぱい結びつける箇所がなくなるまで飾り付けをつくり、翌朝を心待ちにしながら寝床につきました。
 大きな竹林をもっていた父は、七夕が終わったら物干し竿にする予定で、いつも大きく立派な竹を準備していてくれました。朝は、兄妹(八人兄妹)そろって早めに起きだして、庭の真ん中の木に七夕をしばりつけ、歓声をあげました。
 ことしは、友人からいただいた大きな竹に七夕を飾り、夫と一緒に門柱に立てました。なにかと私の美的センスを云々する夫は
「あんたの七夕は、赤色が足りないよ」
と、ケチをつけてくれます。
 ひとりで作る七夕飾りは、出来栄えがどことなく味気なく、もう年齢だし止めにしようかなと思ったりします。でも、七夕飾りが精霊様をお迎えするお盆の行事のはじまりと幼い頃に教えられた私は、やはり気が咎めて欠かすことができません。
 周囲を見回すとテープを利用したり、手っ取り早く既製品で作った七夕飾りが多い中で、近くに住む三十代のご夫婦の家の七夕がひと際目に付きましたので、足を止めて暫し眺めました。過ぎ去ること六十年以上も前の、わが家で作っていたような、手作りの作っている風景が目に浮かぶ七夕飾りだったのです。小さな子供の二人いるご家庭ですが、子供を交えて家族四人みんなで作ったのかしら、それとも子供さんが保育所に行っている間に、若いお母さんが一人でせっせとつくったのかなと、想像しながら眺めました。七夕が飾られている数日間、その家の前を通るたびに、ほのぼのとした気分に浸ることができました。
 「よし、来年はわたしも、昔ながらのわが家で作ったような、満艦飾の七夕飾りをつくってやろう」と、心に呟いたのです。


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